【読みもの】草木のいろ、暮らしのいろ
草木染めの糸には、植物が生み出す美しい色をそのまま包み込んでいるような、思わずやさしく扱いたくなる魅力があります。
四季の移ろいがはっきりと感じられる青森では、桜や藍、りんごなど、季節に寄り添う素材を選びながら糸を染め、ものづくりをしています。自ら染めた糸に加え、東北の染色作家による草木染めの糸も取り入れ、自然が生み出す豊かな色合いを大切にしています。
また、草木染めの糸は、奥入瀬渓流や十和田湖周辺に自生する植物を中心に揃えています。(なお、奥入瀬渓流は国立公園の特別保護地区に指定されており、すべての自然物の採取は禁止されています。)
草木染めをしていると、「今日はどんな色が生まれるだろう」と、毎回わくわくします。同じ植物でも、育った場所や季節によって、まったく異なる表情を見せてくれるからです。染めはいつも思いどおりになるとは限らない手仕事で、その予測できなさこそが魅力でもあります。
鍋に草木を入れて湯を張ると、ふわりと香りが立ちのぼります。春のヨモギはすっきりと、かりんなら甘くやさしい香り。染めの時間は、いつの間にか暮らしの中に、呼吸のように溶け込んでいます。
草木染めを続けていると、季節の小さな変化にも自然と敏感になります。春先の桜の剪定はいつにしようか、夏の終わりのくるみの実はどうだろうかと、ふと気になって仕方ありません。季節に合わせて庭仕事をし、染めをする。人が自然に歩調を合わせて暮らすと、いろいろなことがうまく巡っていくような気がします。草木染めは、日々の暮らしを映し出す記録なのかもしれません。
染めた糸は、時間とともに少しずつ表情を変えていきます。最初の鮮やかさが落ち着き、やわらかな色合いへと移ろう。その変化は「色あせ」と呼ばれますが、私はそれを“時間が重ねた味わい”だと考えています。長く使われた布のように、人の手に馴染んでいく色が好きです。
糸に残るのは、色だけではありません。その時の空気や気配、エネルギーもまた、静かに宿っているように思います。だからこそ、自然の中で生まれるその一色を、今日も大切に使っています。


